なぜ「チケット駆動開発」を導入しようと思ったのか
#ssmjp Advent Calendar 2020 9日目の記事です。
8日目に書いた「チームを観察する」より、自分からチームがどのように見え、 どのように感じた結果、「チケット駆動開発」を導入していこうと考えるに至ったかについて書きました。
チケット駆動開発がまわりはじめるまでの取り組み
https://speakerdeck.com/zinrai/okr-tidd-case
誰が、いつまでに、何をして、どこまで出来ているのかがうまく回ってなさそう
現職へのオファー面談の会話にて、これから所属することになるチームでは、 チーム全員のタスクが見られるようなシステムというのは無さそうだなという雰囲気を感じ取りました。
チームでは日次で集まりミーティングを行っていました。 進捗やこれからの動きについて話し合う場なのかなと思いながら入社初日、ミーティングに参加しました。 ミーティングの中で、エスカレーション対応についての話をしてそうだなという雰囲気をなんとなく感じ取りました。 オファー面談では、これからサービスのローンチに向けてチーム一丸となって進めています的なお話を聞いていました。 そのあたりのお話はどのように共有しながら進めていっているのだろうというところに興味があり耳を傾けていたのですが、 「○○ やってました」というような雰囲気で、どのような状況で、これからどう進んでいくかは聞きとれませんでした。
前職では、「昨日取り組んだこと」「困っていること」 「いまどの地点であるか」「これからどう進めていく予定であるか」をチケットを一覧しながら、 始業時にスタンドアップミーティングという形でチームメンバーに共有していました。 5年近く上記のような進捗共有をチームメンバーに向けて行っていたので、 「○○ やっていました」という情報発信が、はたして意味をなすのだろうかという違和感を持ちました。 今まで自分が当たり前だと思ってやっていたことが、 所属する組織やチームが変わるとそうでもないということに気が付けたとともに、カルチャーショックを受けました。
「あの件どうなりました。」に対して「すいません忘れてました。まだやってません。」 というやり取りをよく耳にし、「誰が、いつまでに、何をして、どこまで出来ているのか」 を把握できていない状況が続いていることに違和感がないのだろうかとも思いました。
チームという単位になっているということは、 それぞれの専門性を生かしながら一人では達成できない何かを目指すものだと考えています。 そのコミュニケーションがうまく機能しているようには見えませんでした。
「チケット駆動開発」により、 このコミュニケーションをなんとかできないだろうかと考えました。
チームメンバーが何をやっているかよく見えない
前職では、各々の取り組みはチケット化されており、 チケットをチラ見することで後追いでき、 1から当事者にどうなっているのか聞くのではなく、 自分の中でも、ある程度のインプットをしてから、 コミュニケーションを取るということがほとんどした。 チラ見ができることによって、 後から入ってきたときにインプットのために当事者を 一時間拘束するというようなことはほとんど無かったように記憶しています。 「ストレージ移行」の話も、その一つの例です。
現職で行われている日次のチームミーティングにて、 その日に「○○ ということをした」らしいということは聞き取れますが、 どのような状態を目指していて、いまどの地点なのかはよくわかりません。 エスカレーション対応も、 お話している人がボールを持っているのだろうなとは思いましたが、 どのようにエスカレーション対応が進んでいるのかはくわかりません。
皆、思い思いの道具を使い自分の作業を進めています。 ある人は Slack に思考をたれ流していますが、 何のトピックのどのプロセスかを読み解くのは大変です。 ある人は Github でタスクリストを作っていますが、プロセスまでは見えません。 ある人は風化してしまった Trello を一人で細々と使っていますが、 ゴミ箱と化しておりノイズだらけのため、ノイズを脳内で除去する負荷が高いです。 チームミーティングの口頭での一言が情報という方もいました。
このような状態でマネージャーは、 個別にミーティングしたり、チームミーティングで質問したり、 いろんなところに散らばっている情報を見に行ったり しているような動きが見えて「負荷が高そうだな」と思いました。
「チケット駆動開発」で見えるようにしていけないだろうかと考えました。
チームで何を、いつまでに、どのような状態にしていくのかの認識が合ってなさそう
「このサービスのローンチのために、いつまでに、どういう状態を目指しているんだっけ?」 という声をチームメンバーからミーティング時によく聞き、私もその一人でした。
人事評価のシステムにより、 メンバーごとの期待されている役割は明文化されていますが、 チームメンバーそれぞれの役割を持って、 チームで、「何を」「いつまでに」「どのような状態にしていくのか」 の認識を合わせならが何かを進めていくような仕組みは無さそうだということがわかりました。
皆でゴールを共有し、それに向かって認識を合わせながら進んでいくという部分が弱そうだなと感じました。
「チケット駆動開発」にて、 チームの認識を合わせながらゴールに向かって進んでいけるのではないかと考えました。
人を受け入れられるようにはなってなさそう
他のチームからお試しで人を受け入れてもらえないかというお話がマネージャーに上がってきていたようで、 「この忙しい時期に人を受け入れるのなんか無理だ」というようなことをチームミーティングにて言っていました。 私が入社してから、どこのタイミングを切り取っても「忙しい」という言葉が出ていました。
前職では、人を受け入れるときはチケットになっているものをベースに 「最初は自分のやっているこの部分をやってみてもらおうかなと考えています」というような コミュニケーションをとっていました。
人を受け入れることが難しいのは、「忙しい」からではなく、 誰が、どのような業務を持っているか見えていなくて、 「これやってみてもらったらいいんじゃない」という コミュニケーションが取れていないことにあるのではないかと考えました。
私が入社したときも 「この人と一緒にやっていってもらいたい」と言われましたが、 やっていく具体的なものは見えるところにほとんど無く、 少しの情報を拾い自分の立ち位置を少しずつ確立していくことになりました。
何かを貪欲に吸収していこうとする精神は必要だと思いますが、 そのマインドに頼りきるのは違うのではないかと思っています。 転職してくる人は、覚悟して新天地に来ているだろうから、 受け入れる側もそれに報いる必要があると考えています。
「チケット駆動開発」によって、「忙しい」を免罪符にせず、 人を受け入れられるようなコミュニケーションがチームでとれるとよいなと考えました。
この状態で働き続けるの辛いな
カルチャーショックを受けたとともに「この状態で働き続けるの辛いな」と思いました。
前職と同じ環境が用意れているとは思っていません。 少ない会社員生活の中で「前職はこうで、本来はこうあるべきだ」と言うだけの転職してきた方を見て、 「クソダサイな」という感情が湧いたとともに、そうはなりたくないと心に固く誓いました。 無い物は、無いことに絶望するのではなく、自ら切り開いていくしかないと思っています。 そんなに前職を話をするのであれば、前職に戻ったほうがよいのではと考えてしまいます。 転職先は前職ではないので、自分が本当に良いと信じたやり方があるならば、 それを根付かせる取り組みを試行しなければ「あの人また言ってるよ」と言われるだけで変化は無いだろうと思っています。
自分が良いものであると信じている「チケット駆動開発」にて、辛さをなんとかしていきたいと考えました。